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蒼穹ぬムリカ星~琉球的徒然草~

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「義珍の拳」

今野敏著「義珍の拳」を読みました。

沖縄の文化といって思いつくのが三線、泡盛、そして空手。

その空手を本土に伝えた船越(冨名腰)義珍の生涯を描いた小説です。

舞台は明治維新から間もない沖縄・首里。
病弱な身体を治そうと首里手の先生に唐手を習いたいと申し出る義珍少年。
先生は仏壇の前で「唐手を決して私闘に使わない」と義珍に誓わせることで習う事をゆるす。
稽古の内容といえば来る日も来る日もひとつ型のみを繰り返すばかり。
他人にとっては孤独で退屈な毎日とも思えるが義珍は何年も実直に続けていく。
やがて義珍は病弱さを克服し、唐手の動きもマスターしていく。
青年となった義珍は学校の教師となり、その傍らで子供達に唐手を教える。
そして沖縄の唐手をとりまとめるべく活動をおこなう。
ある日、義珍は本土で開催された体育展覧会に招かれ唐手を披露する。
それがきっかけで柔道の創始者である嘉納治五郎と知り合い、
彼のすすめもあり本土に移住し唐手の普及に努める。
義珍は唐手を空手と改め、道場での指導、本の出版など精力的に活動する。
空手は学生等を中心に徐々に広まっていくが、
それにともなって昔ながらの型を重視する義珍の教えに対して、
より力強く派手な型や稽古に組み手の導入を求める声が日増しに強くなっていく。

唐手は沖縄の宝
君子のたしなみであり他人と争うためのものではない

そう強く考える義珍は空手のスポーツ化に、
「空手は生きている」と唐手から空手に変容していくさまを、
一部で認めながらも自分のしてきたことは正しかったのかと自問する。
そしてそんな日々の中にも第二次世界大戦の暗い影が忍び寄ってくる・・・。

ざっとこういう内容ですが、
興味のない人にはなんのこっちゃというテーマかも知れません。

しかし戦前の沖縄の元士族や唐手を扱った読み物というのは、
あまりみかけたことがないので興味深く読めました。
(ちょっと義珍さんが聖人君子すぎる感じはしましたが)

武と文、ある意味、唐手と対をなす三線。
しかしおたがい取り巻く環境の移り変わりに、
共通することがたくさんある感じがしました。
by chunse | 2010-09-09 02:48 | 見る・読む・聴く

by chunse