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蒼穹ぬムリカ星~琉球的徒然草~

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島唄考3~島唄の継承~

 まだ現代のように島唄の流派、大会といった唄の組織化がすすんでいなかった頃は、多くの島唄は行事、祭り、遊びといった暮らしのなかに唄があり、その島、その村、その家ごとに唄が継承されていたそうです。しかし暮らしの近代化とともに人々の生活が多様化し、唄が昔ほど重きをおかれなくなるなか、暮らしから唄が消えていくようになりました。

 その意味で特定の曲を教え残していくことを目的とした流派、保存会などの組織は、数少ない継承していく場となりました。

 沖縄と同じ唄三線の文化を持ちながら、近年まで流派のような組織をもたなかった奄美では、シマ唄が絶滅寸前の状態になった時期があります。奄美においては「唄遊び」(人々が唄の掛け合いを楽しむ)が盛んで、唄もそのなかで継承されていくことが多かったそうです。しかし生活・娯楽が多様化するとともに唄遊び文化が廃れていったため継承の場を失ってしまいました。シマ唄が生活の場からは消えつつあるなか、唄者や名人と呼ばれる実力者たちが地道に唄を伝えたこと、衰退していく状況を憂いシマ唄の大会などが催されるようになったこと、など様々な努力により、シマ唄を継承する実力ある若者たちが育ち、近年には内外からもシマ唄が注目されるようになりました。

 生活の場から唄がなくなっていくことは、沖縄も同様ですが奄美と違い、廃れることなく昔も今も盛んであることは周知の通りです。この差について、いくつかの理由は考えられますが、なかでも流派・組織の有無が大きいように思われます。

 地域での生活に深く根ざしている祭り・行事などの芸能においては、さらに継承は深刻な問題です。現実にいくつかの芸能・唄は後継者がいなかったり、昔の島言葉で歌われる歌詞の意味が古老たちでさえわからない、といった現象がおきています。

 昔のように自然に唄が生まれ伝播していくことが、まずあり得ない現代の環境にあって、唄を継承していくためには、より人為的な働きかけが必要なのだと思います。
by chunse | 2005-02-05 01:15 | しまうた雑感

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